障害福祉は、特別な誰かの話じゃない。tocotoco株式会社が目指す「選べる未来」

日本では約10人に1人が何らかの障がいを抱えているとされ、支援を必要とする人は年々増えています。一方で、家族の高齢化や、病院から地域での暮らしへの移行が進む中、それを受け止める住まいや支援体制は、まだ十分とはいえません。こうした課題に対して、障がい者グループホームを中心に、住まいと支援を一体で届けているのがtocotoco株式会社です。
同社代表取締役の山本裕貴氏に、福祉のあり方や、目指す「選べる未来」について伺いました。

目次

障害福祉は、一部の人だけの問題ではない

「障害福祉は、一部の特別な人だけに関係する話ではありません」

そう話すのは、tocotoco株式会社の代表取締役を務める山本裕貴(やまもと ひろき)氏です。

現在、日本では約10人に1人が何らかの障がいを抱えているとされ、生活上の支援を必要とする人も増加傾向にあります。なかでも、精神疾患や発達障害など、外見からは分かりにくい困りごとを抱える人が社会から認識される機会も増えてきました。

山本氏によると、その背景にあるのは、単純に障がいのある人が増えたということだけではありません。かつては「本人の性格や努力の問題」「家庭の中で解決する問題」と捉えられていた心身の不調が、医療や福祉による支援につながれるようになりました。また、うつ病や統合失調症、発達障害などへの社会的な理解も進み、これまで家族だけで抱えてきた問題が、社会全体から見えるようになってきたことも関係しています。

一方で、新たな課題として浮き彫りになっているのが、障がいのある本人と、その生活を支えてきた家族の高齢化です。80代の親が50代の障がいのある子どもを支える「8050問題」や、70代の親が40代の子どもを支える「7040問題」もその一つで、親が高齢になったり病気になったりすれば、それまでと同じ生活を続けることが難しくなる可能性があります。実際、山本氏自身も障がいのある娘を持つ父親であり、「この不安は決して他人事ではない」と話します。

また近年は、精神科病院で長期間治療を続けるのではなく、住み慣れた地域で自分らしく暮らしていく「地域移行」も進んでいますが、住まいや日中を過ごせる場所、生活を支える人が十分でなければ、地域に戻った後に孤立してしまうこともあります。

支援を必要とする人が増え、支えてきた家族も高齢化し、社会のあり方も変わっていく中で、それを受け止める住まいや支援体制は、まだ十分とはいえません。

まずは『安心して暮らせる場所』から

こうした社会課題に対して、tocotoco株式会社では、障がいのある方が住み慣れた地域で安心して暮らし、働き、自分らしい人生を送るための仕組みづくりに取り組んでいます。代表的な事業の一つが、障がい者グループホームです。一般の住居に近い環境の中で、スタッフから必要な支援を受けながら生活できる住まいを提供しています。

しかし、山本氏は「私たちは施設の数だけを増やす会社ではない」と話します。その地域で誰がどのようなことに困っているのか、どのような支援が不足しているのかを考え、本当に必要とされる福祉をつくることを重視しています。そのため、施設をつくって終わりではなく、そこで働くスタッフの雇用や教育、施設を必要とする方への案内、開設後の適切な運営まで、中長期的に伴走しています。

同社が大切にしている考え方の一つが、「ハウジングファースト」です。まずは安心して過ごせる住まいを確保し、そこを支援の出発点とする。そのうえで、一人ひとりに合わせて生活支援や相談支援、働くための支援、看護などを組み合わせていきます。グループホームだけでなく、就労継続支援、障がい者デイサービス、訪問看護ステーション、相談支援事業所なども展開し、本人の希望や得意なこと、苦手なこと、将来どのような生活を送りたいのかを聞きながら、その人に必要な支援を考えていきます。

山本氏が目指しているのは、単に「生活できる場所」を提供することではありません。「そこで暮らす方が、朝起きることが楽しくなるような生活をつくりたい」という想いがあります。重度の障がいがある方や日常的な支援を必要とする方も安心して暮らせるよう、看護師や医療関係者との連携も強化しています。

こうした住まいを全国へ広げるため、同社では2026年から2030年までに、約5,000棟・約25,000人分の新たな住まいをつくるという目標を掲げています。ただし、その目的は建物の数を増やすことではなく、約25,000人の方に「安心して暮らせる住まい」を届け、その人らしく生活できる場所を増やしていくことにあります。

そして、住まいの数を増やしていくためには、そこで働くスタッフや福祉事業者を支えながら、支援の質も同時に高めていくことが欠かせません。

実際、山本氏によると、全国の福祉事業者には、共通した悩みが数多くあるといいます。人材不足職員の教育日々の書類作成による業務負担施設を必要としている方への周知不足のほか、システムの整備食事・備品の管理経営改善法令への対応など、利用者への直接的な支援以外にもさまざまな業務が発生します。こうした課題を現場のマンパワーだけで解決しようとすれば、スタッフの負担が大きくなり、本来もっとも大切にしたい「利用者一人ひとりと向き合う時間」が削られてしまいます。

そこで同社では、自社の加盟事業所だけでなく、全国の福祉事業者を支えるため、人材採用や教育、システム、食事・備品の管理、経営改善、法令への対応、利用者への案内など、福祉事業者が必要とするさまざまな支援をまとめて提供しています。山本氏は、「福祉事業者が事務や経営に悩む時間を減らし、利用者に対する支援の環境づくりに集中できるようにしたい」と話します。福祉事業者の経営基盤が安定し、スタッフが利用者と向き合う時間を確保できれば、支援の質が高まり、結果として障がいのある方やその家族が選べるサービスや暮らし方も増えていきます。

また、福祉は人の生活や命に関わる仕事です。同社では法令を守ることを大前提としながら、外部の専門家からも積極的に意見を取り入れ、すべての加盟事業所が第三者による評価を受ける状態を目指すなど、支援の質を守るための取り組みも進めています。住まいを増やすことと、その質を高めていくこと。この両輪を支えることが、同社が担う役割の一つです。

人の暮らしと、動物の命をつなぐ

tocotoco株式会社が提供する住まいの特徴の一つに、「ペット共生型グループホーム」があります。

この取り組みが生まれた背景には、「障がいのある方の暮らし」「動物の命」という二つの課題があります。

障がいのある方の中には、「ペットと一緒に暮らしたい」「動物がそばにいることで安心できる」という方もいます。しかし、一般的な住まいではペットと一緒に暮らせる場所が限られており、障がいのある方にとって、住まいや暮らし方の選択肢がさらに狭くなってしまうことがあります。

一方、動物を取り巻く環境にも課題があります。

日本では犬や猫の殺処分数は過去と比べて大きく減少しているものの、ゼロになったわけではありません。多頭飼育の崩壊や、飼い主の高齢化、経済的な事情など、さまざまな理由から新たな飼い主を必要としている犬や猫がいます。

そこで同社では、人の暮らしが抱える課題と、動物の命をめぐる課題の双方に向き合う方法の一つとして、ペットとともに暮らせるグループホームを提供しています。

ペットと暮らすことは、単に「動物を飼える」というだけではありません。

利用者が散歩やブラッシングなどの世話をしたり、動物のことを気遣ったりすることによって、日々の生活にリズムや役割が生まれます。また、グループホームで動物と暮らすことで、利用者同士の会話が生まれたり、笑顔が増えたりする場面もあるといいます。

人は動物から癒やしをもらい、動物は人から暮らしや住まいをもらう。

同社では、どちらか一方が支えるのではなく、人と動物がお互いに支え合い、ともに安心して暮らせる関係を大切にしています。

※同社が提供するすべての住まいで、ペットを飼育しているわけではありません。ペットと暮らせる住まいも選択肢の一つとして提供しています。

障がいがあるからといって、暮らし方まで決められてしまうのではなく、「どこで暮らしたいか」「誰と暮らしたいか」「どのように暮らしたいか」を選べるようにすること。

ペットとともに暮らせる住まいも、同社が目指す「選べる未来」を増やす取り組みの一つです。

障がいがあっても『選べる未来』を

tocotoco株式会社が目指しているのは、障がいのある方の「選べる未来を増やすこと」です。

障がいがあることで、住む場所を選べない。仕事を選べない。必要な支援を選べない。誰と、どのように暮らすのかを選べない。

同社では、こうした「選べない」状況を一つずつ減らし、一人ひとりが自分らしい人生を選択できる社会をつくりたいと考えています。

その対象は、障がいのある本人だけではありません。

家族も安心して将来を考えられること。福祉の現場で働く人が誇りを持って働けること。全国の福祉事業者が安定した環境で、より良い支援を続けられること。そして、ペット共生型の住まいでは、保護犬や保護猫にも新たな家族と暮らす未来があること。

利用者、その家族、施設で働くスタッフ、地域、福祉事業者、そして動物たちまで、一緒に幸せになれる仕組みをつくることが、同社が描く未来です。

そのために今後は、全国に安心して暮らせる住まいを増やすことに加え、支援の質を高め、福祉業界全体を支えるプラットフォームづくりにも取り組んでいきます。

人材、教育、システム、経営、法令への対応、食事や備品など、福祉事業者が困ったときに必要な支援へつながれる環境を整えることで、福祉に携わる人たちが利用者への支援に集中できる土台をつくっていく考えです。

そして山本氏は、障害福祉を「限られた人だけが利用する特別なサービス」にしたくないと話します。

というのも、今は福祉と接点がない人であっても、病気や事故、心の不調、あるいは家族を取り巻く環境の変化などによって、自分自身や大切な人がいつ支援を必要とするかは分からないからです。また、現在は家族の中で解決できていることでも、10年後、20年後には状況が変わっている可能性があります。

だからこそ同社が目指しているのが、福祉を電気や水道などと同じように、必要になったときに利用できる社会の基盤にすることです。

同社では、それを「優しさのインフラ」と呼んでいます。

そして、この考え方は同社が掲げる、

「あなたと、あるくひと。」

という理念にもつながっています。

支援する側が一方的に誰かを引っ張っていくのではなく、その人と同じ歩幅で、ともに歩いていく。「トコトコ」という言葉には、決して速い歩みではなくても、一人ひとりの歩幅を大切にしながら、着実に前へ進んでいきたいという想いが込められています。

障がいがあっても、自分らしい住まいや働き方を選べる。家族も安心して未来を描ける。そして、支える人たちも無理なく支援を続けていける。

一人ひとりの「選べる未来」を増やすために、同社はこれからも「あなたと、あるくひと。」として、ともに歩み続けていきます。

会社概要

会社名:tocotoco 株式会社
代表者名:山本 裕貴
所在地:東京都千代田区九段南 2-3-25 平安堂ビル 3 階
事業内容:「tocotoco」ブランドの運営/福祉・医療のコンサルティング事業
公式HP:https://to-co-to-co.co.jp/

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